風俗嬢との恋11 ~姫子の過去4~
悠太と見知らぬ女が裸で抱き合い、喘いでいる――――。
しかもそこは、私と悠太が何度も愛し合ったベッドの中。
私はカッとなり、部屋へと入り「何してるのよ!!」と叫んだ。
私の大きな声に二人ともビックリしたのか「ひっ」という小さな悲鳴が聞こえた。
「え!?姫子?なんで、今日出勤だろ!?」
そう慌てながら服を着る悠太。
でも女の方はふてぶてしく、裸のままたばこに火をつけた。
「誰?これ。同棲している彼女?」
女は私のことなんか気にせず、そう悠太に聞いた。
「同棲って言うか…ツケがあるんでそれを回収するために一緒にいるんだよね。」
「なんだ、じゃあただのお客じゃん」
ただのお客―――――。
さっきまで熱くなっていた体は、その一言で急速に冷めて行った。
お客と言ったらそうかもしれない。
でも、悠太は私にプロポーズしてくれた。
ナンバーワンになるために一緒に頑張ろうって言ってくれた。
「違う!私と悠太はちゃんと付き合ってる!」
私は悠太の言葉を待った。
悠太なら、この女の言葉を否定してくれるって信じてたから。
でも悠太は考えるそぶりさえも見せず
「え?俺、ホストだよ。特定の彼女なんて作ったりしない。姫子ならそういうのもわかってくれてるんだとばっかり思ってたけど」
と言った。
私は目の前が真っ暗になり、ただ茫然とその場に立っていることしかできなかった。
遠くで女の高笑いが聞こえていたが、それに反応することさえできない。
「だめじゃない、悠太。お客の管理もホストの重要な仕事よ。こんな出しゃばりな客がいたら他の太客が逃げちゃうわよ。ということで、私は帰るわ」
「ご、ごめんな愛。こんどまた埋め合わせするから…!」
そう言いながら二人は私を置いて玄関へ行ってしまった。
私は一人きりでさっきまで悠太とあの女がいた乱れているベッドをただ見つめていた。
ふと我に返るともうすでに辺りは暗闇に包まれていた。
悠太が返ってきた様子はなく、あのままあの女とどこかへ行ってしまったようだ。
「悠太にとって私はただの客だった…」
自分の口でそうつぶやくと、胸の辺りがギューッと締まり息苦しくなる。
悠太が大好きだから、大好きな悠太のためを思って今まで生きて来たのに。
悠太の夢を叶えるためなら惜しくないって思って、だからキャバクラやデリヘルで働いてきたのに。
悠太のために嫌なことも辛いことも頑張ってきた。
でも悠太にとって私はたくさんいる客の中の1人にすぎなかったんだ。
私は泣き疲れた体を引きずりながら、悠太の荷物をまとめて玄関に置いた。
そうするとすべての物事が冷静に見られるようになってきた。
普通、大事にしたい女の子にあんなにお金を出させたりしない。
ましてや風俗で働かせるなんて絶対に考えないはず。
半同棲生活になったのも、きっと悠太が家賃を払いたくなかっただけだ。
自分は利用されてただけだって、どうして気付かなかったのかな。
きっと悠太は帰って来たら私を優しく抱きしめる。
「さっきのは嘘だよ。お客の手前、彼女だって言えなかったんだ。わかるだろ?」
そう言って私を安心させて、また利用しようとするだろう。
でも彼の本心はさっき本人が言っていた。
“俺、ホストだよ。特定の彼女なんて作ったりしない”
これが、すべて。すべてなんだ。
そう考えると悠太への気持ちがスーッと冷めていくのが自分でもわかった。
つづきはこちら!
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13話目【風俗嬢との恋12 ~ずっと聞きたかった言葉~】